COMMENT モニターの声

SIN DG 75モニターレポート
井出 和浩 様 よりSIN DG 75のモニターレポートをいただきましたので、紹介させていただきます。

 井出 和浩 様 、本当にありがとうございます。

< 以下いただいたレポートです。>

AET SIN DG75モニターレポート
 井出 和浩

今回AET小原氏より新しく発売となったSIN DG75デジタルケーブルの試聴機会をいただいたのでレポートしたいと思う。

試聴したのは、下記のシステムである。

CDトランスポート:アンサンブル社 ダイクローノ・トランスポート
DAコンバーター:アンサンブル社 ダイクローノ・DAC
プリアンプ:チェロ社 アンコール1MΩ
パワーアンプ:アンサンブル社 コルフェオ
電源アイソレーター:JOB SWEETER

比較には、いままで愛用していた同社のURDG75(spec2004)およびKIMBER KS-2020を使用し、トランスポート-DAコンバーター間に接続した。

ただし、トランスポートの出力がBNCのため、接続に際しては付属品を含め複数のBNC-RCA変換プラグを使用した。その際の具体的な音質変化については後述する。

さて、今回のレポートは長くなるので先に結論から言うと、「聴いたら最後、元に戻せないほどの出来映え!」と言い切ってしまおう。

エージングゼロの新品状態でも、思わずニタニタしてしまいレポートを書くことを忘れて、次から次へと愛聴盤に聴き入ってしまった。最近、かつての愛聴盤がSHM-CDとして再販されたこともあり、喜びは二重のものとなったのだ。でも、聴き進むうちにだんだん不安にもなってくるから、人間とは不思議なものだと思う。それというのも、聴いているのは今までさんざん聴いてきた音源だし、プレーヤーを最新機種に買い換えた訳でもなく、でも音は驚くべき変貌を遂げている・・・。

商業誌のPRページでもないから、率直に思ったままを書いているけれど、どうにもこうにも腑に落ちない。そこで同社ホームページの開発秘話やリリース案内なども読んだけれど、導体を2倍にしたとか、こだわりのプラグだとか書いてはあるが、この音になったキーはこれだな!とピンとくるものがないではないか?これを書いている現在も、何が何だかよくわかってはいないのだが、とにかく音はとても好ましいものになったので、どこが?どう?好ましくなったのかを順を追って書いていこうと思う。

まずアナログ時代から聴きなじんだLINN RECORDSのCarol Kidd「All My Tomorrows」を再生してみた。するとどうだろう、トラック1のアコースティックギターの旋律がほんの数秒、いや最初に音が出た瞬間から、最前までとまるで違う音であるのに驚いてしまう。何よりギターの音が厚い。そして弦をつま弾く音とそれが空間に広がっていく様、そのエアー感がリアルなことといったらないではないか。オーディオ的には、S/N感が良くなったとか情報量が増えたとか言うのだろうが、そんな細かな分析が不要なほどの激変ぶりだ。

次いでヴォーカルがはじまると、センターに等身大のボーカルが現れる。ささやくような優しい歌声だが、肉声感に富んだ浸透力の高いボーカルに圧倒される。URDG75の場合、もっとボーカルの口元が小さくまとまり、引き気味の三次元的に広大な音場にちょっと硬質なエッジの立った音像がピシツと並ぶのが持ち味で、それを好ましく思っていた。しかしSIN DGはもっと音像との距離が近く、そして中低域の厚みがあり、かつ解像感が高いから、音像を描くエッジが細くかつしなやかなように思う。だからといって単に音像指向に変わったという単純なものではないのは、次にREFERRENCE RECORDINGSの「EXOTIC DANCES from the OPERA」を聴いてみるとはっきりする。

今度は、従来通り引き気味の三次元的な音場が現れたのだ。それも、よりスケールアップして。つまり、これまでの同社製ケーブルがキャラクターとして常に引き気味の音場を提示していたものを、SIN DGにおいては録音状態に、より則した音場を自在に提示するということらしい。

ただし、ここでも各パートの定位を音像のエッジにより明確にするのではなく、演奏者の人数を数えられそうなほど情報量を飛躍的にアップさせつつ、ひとかたまりの響きとして提示してくるから、最初はその表現の違いにとまどってしまった。また、ここでも中低域の厚み、エコーの拡がりや演奏者の息づかいなどに代表されるエアー感は際だっており、良い意味で緊張感のある演奏を盛り上げてくれる。

僕自身、このレーベルの録音はあえてオーディオ的快感を強調するような味付けがあるものと思っていたのだが、じつはそれが誤解だったということが、SIN DGを導入したことによって、はじめて明らかとなったのだった。

さらに比較的新しい録音からEMILIE-CLAIRE BARLOW「LIKE A LOVER」を聴いてみると、SIN DGの持ち味が際だつ。優秀録音盤ならではの聴き応えも凄いが、艶やかなボーカルや切れの良いベースの響きに、いままでの同社製品にはあまり感じなかった好ましい演出が伺える。この辺りがHP上にうたわれるレアメタルの使用などによるものなのかと推測するしかないが、オーディオ的な性能以外の部分、つまり音色の官能性についても、大いに魅力がアップしたと思う。この時点で僕は、ほぼSIN DG一本でいけるという目処をつけたのだった。

そしてこれは意外な発見でもあったが、分解能が良いためか特別に優れた録音でなくても、中高域のピーク感(いかにもデジタル臭いと言われる部分)が耳障りに聴こえないのも本製品の美点だと思う。学生時代に良く聴いていた80年代ロックなどリマスター盤が出たと聞くと、ついつい購入してしまうのだが、そうしたものでもさらりとその成果を聴かせてくれるのがうれしい。最近購入したSHM-CDの中には、いかにも当時の録音の限界を感じさせるものもあるが、このケーブル導入の効果もあって音楽に入り込むことが容易だ。

もう一つ、意外なことにエージングによる音質の変化が素直な点も特筆したいところだ。エージングによって高域、低域端へ伸びていき、フットワークが軽くなってくるのだが、大きく音調が変化することがないので、安心して装置のチューニングに専念できる。僕自身、エージングの途中、J-POPを小さめの音量で聴いていても、ときどき、はっとなって耳をそばだてて聴き入ってしまうこともあったほどだ。

ただし、情報量の飛躍的なアップによって装置や使いこなしの欠陥も露わになるから、それをこのケーブルの弱点と誤解してしまう心配も無いとは言えない。高性能な装置への変更は常にこうした危険もはらんでいるので、物事の本質を見極める目と可能性を信じてチューニングを継続する忍耐が試されることになる。

以上のように僕的には、新しいリファレンスケーブルとして申し分ない仕上がりであるのだが、あえて難点を言うとすれば、それは付属のBNC変換プラグと言うことになるだろう。これとても通常品よりは見通しの良い音を提示してくれるが、試しに手持ちの製品を試してみると、さらに磨きのかかった素晴らしい音を聴かせてくれた。BNCで接続する際には、まずは付属品でチューニングを行い、ある程度セッティングが固まったところで、別のものを試してみることをお勧めする。イコライザー的に微妙にニュアンスの変化を感じ取れると思う。

こうしてエージングがある程度終了した今、愛聴盤の数々をSIN DGで聴いていると、本製品によって音楽的表現力がいかに増したかを実感せずにいられない。HP上には官能性をうたっているが、単にオーディオ的な美音へと傾注することなく、オーディオ的な性能を突き詰めることによって獲得した本物のリアルさは、どのようなジャンルのソフトに対しても、その優れた性能を発揮することと思う。

結局、いまだにどうしてこれほどのケーブルに成長したのか?掴みきれないでいるが、結局、一つの飛び道具的な材料や技術に代表されるものではなく、目標に向かって数え切れないほどのトライ・アンド・エラーを繰り返した結果、この音に到達したのだろうと思う。つまりそれは設計者の小原氏が頭の中に思い描いた設計図、言い換えると商品として目標とした音が飛躍的に進歩した結果と言えるのではないだろうか?

最後にこのような貴重なチャンスをいただいた小原氏にあらためて感謝の意を表して、レポートを終わりにしたい。

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