STORY 開発秘話

オーディオケーブルの開発秘話(5)
 新たな問題! そして、誰も作れなかったオーディオプラグを追い求めて

 この日、aetの小原は自らの進むべき「道」を求めて、富山県の山中をさまよっていました。

 山中と言っても、人里はなれた場所ではありません。山中にある「工業団地」で、ある特殊な加工が出来る企業を探していたのです。

 前回、国内産のオーディオプラグの開発に成功したaetの小原ですが、ここでさらに思わぬ問題が出てきたのです。

◆ 電気抵抗が下がる、本物の「金メッキプラグ」を求めて

 供給が止められた「プラグ」は国内産で自作することが出来ました。

 後は、組み立ててメッキを施せば完成です。

 プラグはそのままでは腐食してしまいます。したがってメッキ加工を施すことになります。そこでaetの小原は、電気的特性を最大限に上げるために「金メッキ」を施す事にしました。

 
「このプラグに金メッキを施して下さい。」

 「はい、わかりました。キンメッキですね、お任せ下さい。」

 そう言って引き受けた業者から戻ってきたプラグのメッキに、ほとんど金は含有されていませんでした。

 俗に言う「キンメッキ」とは「キンピカに光るメッキ(金色メッキ)」のことで「金を使ったメッキ」ではなかったのです。

 「キンピカに光るメッキ(金色メッキ)」は、ニッケルの上に銅と亜鉛を乗せて作製するそうです。「キンピカに光るメッキ(金色メッキ)」は、時間 とともに変色していく事があります。「さびない金が、どうして色が変わるのだ?」と疑問に思われた方もいらっしゃると思いますが、実はそういう理由なので す。

 さらに悪いことに、光沢メッキは電気的抵抗が上がるのです。アクセサリーには良いですが、音楽での使用は命取りです。「透明度」「鮮やかさ」等の体感的効果に大きく影響を与える事がわかってきました。

◆ 「金メッキ」に「金」は、ほとんど使われていなかった

 普通に「キンメッキをお願いします。」と言っても話が通じないし、そもそも「金のメッキ」では無い事がわかったのです。

 そこで、メッキ業界の会員になり、業界情報を得る事からはじめ、やっとの思いで「メッキ加工では富山県に非常に技術力が高い企業が多く存在する」と言う情報に行き着いたのです。

 富山県の企業は非常に優秀でしたが、それでも思った「音」がなかなか出ませんでした。

 金やロジウムを使ったメッキをプラグに施すと、表皮効果で伝導率が上がるはずなのに、予想した変化が感じられなかったのです。

 「どうしてだろう?」と、いろいろと調べてみました。

 その結果「貴金属の含有量が少ない」ことが発見されたのです。多くても5%、通常は0.0数%と言う含有量でした。これでは「差」は感じられなかったのです。

 小原は、10%とか20%と言う程度の純度は、求めてはいませんでした。欲しかったのはズバリ純度100%だったのです。

◆ 「金100%のメッキ」を捜し求めて

 そこで小原は「100%金を載せてくれる企業」を求め、さらに探し始めました。(実際には、物理的に100%と言う数字は不可能です。現実的には「フォーナイン」と言われる「99.99%」以上の純度を求めていったのです。)

 ここで、「なぜ、小原が高純度の金メッキにこだわっていたのか」を説明させてください。

 ケーブルにプラグは必需品です。しかし、「プラグ=抵抗物」という考えもあります。なので、コアなマニアの方は、ケーブルを極端に短くしたり、ケーブルを端子に直接ねじ込んだりして電気抵抗を下げる工夫をしていました。

 しかし、ドイツの高級プラグは「使ったほうが音が良くなる」と言う噂があります。そして、実験をしてみると本当に良くなります。理由は接点環境の向上と、金メッキによる表皮効果であることがわかりました。

 このような重要な理由で小原は純度の高い金メッキにこだわっていたのです。(現在でも、本物の金メッキを使っているのはAETとドイツの製品しかないと自負しています)

 結局、SONY様の紹介で、大田区のある企業にたどり着きました。そして、ここでの試作品は非常に満足のいくものでした。

 抵抗値がグンと下がるので、ロスが感じられず「音が良くなる」と言う印象さえもたらしました。この「金メッキ」技術は、RCAプラグを始め、ACプラグ、IECコネクター、Yラグ UFPシリーズに使われ、非常に高い評価を得ています。

◆ スピーカーケーブル用端子への応用が時代を変えた!

 特に、スピーカーケーブルの端子に使われるY型プラグ(Yラグ UFPシリーズ)で、すばらしい効果を発揮しています。

 スピーカーとアンプにはケーブルは絶対必需品です。特に高性能なアンプやスピーカーほど高品質なケーブルが必要です。しかし、素晴らしく高品質なケーブルを使っても、端末のプラグが悪いと接触抵抗が上がって、効果を発揮しなかったのです。

 そこで、各社ともにY形端子をつけていますが、あまり音は良くはなりません。理由は、真鍮やリン青銅などの、抵抗の大きな素材が使われているからです。

 ここでも、小原は「音の良くなるY形端子」という、常識ではありえない製品作りにチャレンジしました。「良い音を実現するためなら、どんな苦労も出費もいとわない」と言う、一音楽ファンとしての魂を燃え立たせたチャレンジでした。

 第一の工夫は抵抗の低い、日本製の無酸素銅を使うことです。リン青銅の何倍もの導電性を持っているので、素材の条件はクリアーしました。

 次に、大きな表面積と断面積を確保することです。帯状の銅の板を、平たい形を維持したまま加工して、「リボン断面」を実現したのです。

 とどめは、抜群の表皮効果を発揮する、高純度の貴金属メッキです(99.99%以上)

 以上の工夫を施すことで、「音が良くなるY形端子」が誕生しました。

 このアイテムの登場は、業界に大きなインパクトを与えました。本来Y形端子は、売り場の端っこの方にチョコンと置いてあるのですが、ショウケースに堂々と並べられることとなったのです。

 「スピーカーケーブルにつけるだけで抜群に音が良くなる!」と言う、口コミは全国に広がり、お店の定番裏メニューとして、バカ売れアイテムになってしまいました。まるでアンプを変えたように力強くなり、透明で鮮やかなサウンドに生まれまわります。

 余談ですが、一般には「ニッケルメッキ」のことを「ロジウムメッキ」と言われています。もちろん本当のロジウムは使われていませんし、「音」も硬 くて刺激的な音になります。しかし、実際にロジウムを使ったメッキを施すと、シルキーな、やわらかくて透明なサウンドになるのです。

 是非、あなたの耳で確かめてみていただきたいと願っています。

◆ 「金だけのメッキ」と「金+ロジウムのメッキ」の違いとは

 aetでは「金だけのメッキ」と「金+ロジウムのメッキ」の2種類のプラグを製造しています。このプラグの価格の差はロジウムの原価の差(金の約9倍します)で、性能の差ではありません。

 「どちらが良いですか?」と良く聞かれますが、音的な「好みの差」で決めていただきたいと思います。

 小原の個人的な感想では、「金のみの方が音的にはナチュラルな感じで好印象ではないでしょうか?」と言っています。ロジウム自体は、金より約7倍程度硬く、その分「磨耗に強い」「溶けない」「腐食に強い」と言う特性が上がります。

 ちなみにロジウムに似た「硬い物質」にプラチナがありますが、こちらは電気抵抗が高く、音楽向けではありません。


 このようにして、探しに探して、やっと思った純度を出せる企業を見つけることができたのですが、ここでも小原を「驚愕の事実」が待っていたのです。

 それは、なんと「金メッキ」はプラグの資材よりも何倍も高額だった。

と言う事実です。

 言われて見るとその通りです。かまぼこ板のような金の塊が、ものすごい価格になります。aetのプラグ製作の時も、金・ロジウムを多く使うので、地金会社がガードマン付きで持参してきた程です。


 請求書は 使用した金・ロジウムのカラット数(ダイヤモンドで使われるあの用語です)+工賃と言う形式で来ます。

 「カラット数+工賃」と言う請求書は、小原もこの時初めて見たと言います。

 確かに「良い音」が出ますが、非常に高額なオーディオプラグが完成した瞬間でした。

 このオーディオプラグのシリーズは、非常に人気の商品となりパーツとしての販売も行われることになりました。
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