STORY 開発秘話
- オーディオケーブルの開発秘話(6)
- 新たな圧力! ついにハンダの供給も止められた。
プラグの自作が可能になると、今度はプラグとケーブルをつなぐハンダの供給を止められました。(もう、踏んだり蹴ったりです。)
アメリカの「高級ハンダ」を使っていましたが、このハンダは非鉛ではありませんが、非常によいハンダでした。
◆ ついにハンダも自作することに
これには小原も困りました。
プラグのみならずハンダまで自作するはめになったのです。
この時も小原は「どうせ作るなら最高のハンダを」と考えました。
この頃になると、こういう事態にかなり「慣れっこ」になっていたようです。
◆ 環境の観点から「無鉛ハンダ」の使用が決まっていた
この時期aetは、すでに日本の最高級の技術を持つ多くの企業とも提携を行っていました。
また、aetも「それなりの生産規模の企業」になっていた為、当局から環境問題からの視点で「鉛、重金属、カドミウム等の使用は止めて下さい。」と指導されていました。
このタイミングで、ハンダの供給が止まった訳です。
したがって、自作するにしても、どこからか入手するにしても「無鉛ハンダ」を使う事は、すでに決まっていたことでした。
この時、国産の非鉛ハンダも販売されていましたが、塩素が強かった為、腐食されたり、目が痛くなったり、くっつかないし、音も「刺激的な音」になってしまう特性がありました。
そこで業者を回って試作品を作ってもらいましたが、音的に今一歩納得ができなかったのです。「煮えきれない」と言うか「抜けきれない」と言うか、とにかくそんなイメージでした。
この当時、非鉛ハンダは低評価で、「価格が高い上に品質が悪い。」「音楽や楽器に向かない。」とレッテルを貼られていました。確かに従来のハンダと比べると、「低音が出きれない。」「高音も抜け切らない」と言う感覚が強く感じられました。
さらに、「作業性が悪い」と言う欠点もありました。なかなか溶けづらく、くっつきが悪いのです。
またしても小原は、
どうして、こんなに「質」も「音」も悪いのだろうか?
と調べてみる事にしました。その結果わかった事は、
まずは素材に問題がある
と言う点でした。
原材料が、ちゃんと考えて使われていませんでした。
実際に試作品を使ってみると今一つなので、質問をしてみても「非鉛ですよ。」と言う答えしか返って来ませんでした。
「どうしてなのか」「どうすればよいのか?」に困り果てて、分析してみると「不純物が沢山含まれていた。」とか、最初の時期はなかなか上手く行きませんでした。
◆ 非鉛ハンダでも、よい音を出せるようになりたい!
このような状況下で非鉛のハンダを開発するのに、ある有名な会社が協力してくれました。NASAにもハンダを納め、スペースシャトルや日本の新幹線でも使用されている高い技術を持った日本の企業です。
この企業は、非常に高純度の非鉛ハンダを製造してくれました。それは、高品質で信頼性が高い非鉛ハンダでした。
ハンダは、「スズ」を始めとするいくつかの素材を溶かして混ぜて作られる合金から作製されています。この「素材を溶かして混ぜて合金を作る」ので、「素材の純度と完成品の品質は関係ない」と言う説もありますが、やってみた結果、大きく影響を与える事がわかりました。
高純度・高品質の素材を使ったハンダは、やはり音がよかったのです。
これで「かなりよい音が出せる非鉛ハンダ」が出来ました。しかし、よくよく使って見ると「いまいち中高音が抜けない」と言う点に気づきました。
この原因について技術者の方と詰めてみました。
まず最初に見つかった原因は、「銀の形状」でした。
非鉛ハンダでは、製造過程において銀の粉を混ぜるのですが、銀を顕微鏡で拡大すると「丸い形状」をしています。実は、これでは導電率は上がらなかったのです。
そこで銀の粉の形状を「ある形状」に変えてみた所、やっと導電率があがり中域が改善されたと言う事もありました。
この時点で、市販の非鉛ハンダの4倍以上(通常のハンダの8~9倍)のコストの素材を使っていましたが、なぜが高音域の改善には効果が出ませんでした。
納得がいかない小原は、さらに原因を追及していくことになります。
試行錯誤の結果、「銀の含有率」も導電率に影響を与えていたことが解りました。
銀の含有比率を変えて実験してみた結果、ある%を超えると伝導率が下がり、音も悪くなる事が発覚しました。当然、その逆に、一番ベストな含有率もわかりました。
ベストな銀の含有率で製造したハンダを使うと、一番良い音が出て、さらに高域の癖も無くなったのです。さらに、普通のハンダに比べても「33%程度抵抗値が低い」と言う驚異的な非鉛ハンダを作ることが出来たのです。
◆ 非鉛ハンダも、めちゃめちゃ高かった!
普通のハンダに比べて「33%程度抵抗値が低い」と言う驚異的な非鉛ハンダを作ることが出来たのはよいですが、これがまたメチャメチャ高額なハンダとなりました。
もちろん「フラックス」と呼ばれるハンダの中に含まれる成分も、通常は、「松脂・塩素・硫黄」で作られているのですが、aetの非鉛ハンダは「松脂・塩素・硫黄」を抜いた特殊素材で作られています。
高純度・高品質にこだわったので、素材自体もそれまでの非鉛のハンダの4倍以上することになったのですが、、、それ以上に「手数料」がメチャメチャ高くついたのです。
製品として見た場合、通常の鉛のハンダは1kg4千円程度、市販の非鉛ハンダでも1kg6~7千円程度だと思いますが、aetの非鉛ハンダは、なんと驚くなかれ、1kg3万6千円と言う超高額の製品になっていまいました。
◆ 耳の肥えた人を納得させた「ハンダケーブル」事件
aetが非鉛ハンダを開発を開始する時期に、ある方に「非鉛ハンダは音が悪いからオーディオには向かない」と言われた事があります。この方は、かなり耳が肥えた方でした。
そこで、新しく開発されたaetの非鉛ハンダを使った「ハンダケーブル」を作って見ました。これはケーブルの部分も、線を使わずにハンダをケーブル状にして作った2mくらいの長さの「ハンダケーブル」です。(私の書いている意味がわかりますか?)
通常のハンダでこんなケーブルを作ったら、「こもったモアーっとした音」になり聞けたものではありません。aetの非鉛ハンダは、ふつうのオーディオケーブルと同じ程度の伝導性能がある事を実証したい小原の、ちょっとした「いたずら心」でした。
ある時、この耳の肥えた方に「新しいケーブルが出来たので聞いてください。」とお願いして聞いてもらいました。もちろん使ったのは、小原の「いたずら心」満載の「ハンダケーブル」です。
この耳の肥えた方は、「ふつうの銅線のケーブルみたいだけど、何が新しいの?」と言う顔で聞いていたそうです。
そこで「実は、これはすべて非鉛ハンダで作ったケーブルです」と。本当の事をお話しすると、「ありえない」を連発され、非常にびっくりされたそうです。
「非鉛ハンダは音が悪いからオーディオには向かない」と信じていた方が、自らの耳で納得した瞬間でした。
◆ 新しい非鉛ハンダが数々のトラブルを激減させていた
1kg3万6千円のaetの非鉛ハンダですが、実際にプラグ1個に使うのが約2グラム程度、価格にして数十円程度となります。
一般の方はあまり知らないと思いますが、ハンダが原因での不良率は、音響業界では約8%程度だと言われています。1万個出荷すると、800個が不良で戻ってくる事になります。
年間数万個の製品を出荷しているaetでは、これは大きな問題となります。
ハンダのトラブルの原因は、多くが「腐食」です。フラックスに使われる「松脂・塩素・硫黄」に強い腐食性がある為、日本の高温多湿の気候によって「ハンダがさびる」と言う現象が起きやすくなっているのです。
さらに、これは音楽業界にとって大きな問題でした。コンサートやレコーディングでは、大量のケーブルが使用されます。したがって「トラブルは、起こるのが当然」というのが現場での認識です。腐食でトラブルが起こるため、特に夏場にトラブルが多かったのです。
aetのハンダは、フラックスに「松脂・塩素・硫黄」を使っていないため、「腐食」によるトラブルが起こりません。これにより不良率は大幅に減少し、実質0%程度まで下げる事が出来ました。
そして、「電気抵抗率が低くよい音が出て、さらに腐食しない」と言うのは、音楽業界にとって大変なメリットをもたらしました。ハンダ不良で、コンサート中止とかレコーディング中止にならないので、プロの現場で採用されました。もちろん機材のトラブルも少なくなったのです。
◆ aetの非鉛ハンダが、楽器にも使われ出した「意外な理由」とは
さらに、ギターテクニシャン(調整者)やビルダー(作る人達)と呼ばれる人たちが、aetの非鉛ハンダを使い始めました。
フラックスに「松脂・塩素・硫黄」を使っているハンダでは、いつか必ず「腐食」が起こります。(それも近い未来に) そして「腐食」が起こる度に、確実に楽器を痛めていく事になります。
これは、ビンテージギターの様に、新しく作れない楽器を調整する技術者にとっては、何としても避けたい事態です。
しかし、aetの非鉛ハンダを使うと、「楽器を痛める」という事態を避ける事ができます。このような「意外な理由」で、広まっていった事もありました。
そして、aetの非鉛ハンダは、この様な数々の実績が評価され、オールパーツ社にOEM採用される事になったのです。
このように、日本最高級のレベルの技術を持つ企業の協力のもと、半年がかりの試行錯誤の結果、従来の一般的なハンダに比べて約33%電気抵抗を抑えた、塩素を使わず、環境にも電気的にも優れた非鉛のハンダの開発に成功したのです。
最近「自作派」の方から「ハンダはどこで入手していますか?」と言うご質問を頂くことがありますが、実はこういういきさつで自社製のハンダを使用して、性能を向上させていたのです。
◆ まとめ
1:作業性の向上
それまでの非鉛ハンダは、溶けにくく、くっつきにくい欠点があり、普及が遅れていました。作業性を改善するために、スズ、銀、銅を主体とする独自の合金を開発し、従来製品と同等以上の作業性を実現しました。
2:音質の追求
それまでの非鉛ハンダは、刺激的で妙な癖がああることからも、音響用としては敬遠されていました。旧来の非鉛ハンダを解析すると、多くの亜鉛、ニッ ケル、アンチモンなどの不良不純物が検出されました。そこで、純粋なスズ、銀、銅を粉状に加工して、固め直す工法を採用した結果、素晴らしく純粋で力強い サウンドを実現しました。
3:価格の挑戦
一般のハンダのキロ単価は4千円程度ですが、aetのハンダはその10倍程度と言う、超高額ハンダです。しかし、プラグ一箇所に使うハンダは、わずか数 グラム、コストにして数十円程度です。このたった数十円で、音質、信頼性が大きく改善されます。ぜひ、お使いいただき、実感していただきたいと思います。
4:楽器への有効性
特にビンテージ楽器は、修理、調整に神経を使います。貴重な素材や部品をいためてはいけないからです。aetの非鉛ハンダは、非腐食性の合金なの で、他の部品をいためることが無いのです。しかも、音質的に楽器の音を損なう事無く信頼性をあげるので、楽器の修理には不可欠な製品と言えます。