STORY 開発秘話
- オーディオケーブルの開発秘話(9)
- HHシリーズ3 新たなるチャレンジ パワーと繊細の両立を求めて
日本初の国産高級オーディオケーブル HHシリーズの2代目「HHシリーズ2」は、「静電容量が増えない」「振動に強い」「スピード感のある」、一言で言うと「ドカーン」と鳴る「パワー一辺倒」のケーブルでした。
そこで、パワーだけでなく、繊細さとの両立を求めて、新たなるオーディオケーブルの開発を開始したのです。
◆ もっと「感動する音楽」が聞きたい
小原は、感動する音楽が聴きたかったのです。その為に、人々が感動できるオーディオケーブルを作りたかったのです。
小原はまず、「世界中の超高級のオーディオや達人の音には、どんな特徴があるのだろうか?」と考えました。この視点から再度聞いてみると、まず「力強さと訴求力」がある事に気づきます。次に「繊細さと美しい音」が同時にあることにも気づきます。
「力強さと訴求力」「繊細さと美しい音」、この2つが同時に存在することは、ある意味「驚き」でした。そして、この様に「力強さと繊細さ」を表現できるケーブルがあれば、すばらしいと思ったのです。
この頃の小原は、それまでと打って変わって「非常に豊かな精神状態」でした。根が工業技術者なので、やはり「モノ作り」を始めると魂が燃え始めるのです。
音楽好きの全ての人達に、「ケツが浮くくらいの力強さ」と「涙が出るこらいの繊細さ」を伝えたいと、密かに新ケーブルの開発に着手しました。この時も世間では「いい気になって、遊び呆けている」と言われていましたが、まったく気になりませんでした。
◆ 「ケツが浮くくらいの力強さ」と「涙が出るこらいの繊細さ」を求めて
新しいケーブルの開発方針は決まりました。
一流のモノには、「相反する2つのファクター」が同居しています。一流のワインや一流の車は、すべてこの「相反する2つのファクター」が同居しています。それが故に、人は「感動する」のだと小原は考えたのです。
この時期、パワーと繊細さの両立したオーディオケーブルは、ほとんど存在しませんでした。まだ市場は「パワーと繊細さの両立」を必要とはしていなかったのです。
パワーを求める人は、よりいっそうのパワーを。繊細さを求める人は、よりいっそうの繊細さを求めていました。多くの人は、その両方を、同時に手に入れられるとは考えていなかったのです。
この時点で小原は、「どうやったらパワーと繊細さを両立出来るのか」が、まったく解っていませんでした。
◆ 「美しさ」「官能性」「色彩性」は「情報量」で再現できる
まず、「美しさ」や「官能性」「色彩性」を再現するには、「情報量」だと考えました。「情報量」はケーブル技術的には「表面積」と比例します。しかし、単に「太いケーブル」にしても意味はありません。磁界が発生し、結果として電気抵抗が増える事になります。
そこで、細い線を何本も使う方法を試してみました。1本1本が細ければ、電気抵抗を抑えながら表面積を増やすことが出来ると考えました。が、、、
結果は、良くありませんでした。
「繊細さ」は出て来たのですが、「力強さ」「色彩性」がぼやけて来たのです。線を増やす事により、「静電容量」が上がったのが原因でした。「細かい音」も「高い音」も出なくなりました。「力」も出なくなりました。
「力」のないモヤモヤした音。まるで素人のガレージメーカーが作ったケーブルの音になってしまったのです。
ここで小原は困り果てたのです。3ヶ月くらい困りまくっていました。図面を書いては棄て、書いては棄てを繰り替えしました。
◆ リニアモーターカーの技術に学ぶ
そこで、工場の責任者だった方に話を聞きにいきました。すでに引退されていましたが、小原が師と頼りにしていた技術者です。
実はaetのケーブルは、「新幹線のモーターの巻き線」を参考に開発されました。aetのケーブルが整列巻きで作成されているのは、こういう理由からです。そして、「新幹線のモーター」は日々進化しています。これを追っかけてみる事を提案されたのです。
余談ですが、「整列巻き」とは整列に隙間無く巻いている状態を言います。これで、軽くでき、さらに静電容量を少なくする事ができます。他社のケーブルの多くは、隙間だらけなのでスカスカになるのです。
この時期は、整列巻きを「開いた」リボン状のケーブルで実験していました。だいぶ良くなったのですが、まだまだ煮えきれない状態でした。
師とも頼る技術者の方のアドバイスに素直に従い、小原はツテを頼って新幹線の技術者に話を聞くことが出来ました。
「これはリニアモーターカーの構造に似ている」と言われました。
整列巻きで、さらに「開いた」リボン状のケーブルを、もう一回クルっと巻いて丸くすると、コンパクトになり問題が改善するとアドバイスを受けました。
◆ 「小径中空円筒構造」を採用
実は、それまでの「円筒構造」は、隙間だらけなのでデメリットの方が大きくなるのです。そこで、整列巻きで作ったケーブルを細い円筒状に巻いてみたのです。
これで、「納得のできる音」を出すことが出来ました。何度も書きますが、小原は工業技術者です。理論的に納得出来ない方法には、絶対に手を出しません。「理論的には正しくないが、なぜか不思議のパワーで」みたいな説は、一切採用しないのです。
今回も、現代科学で理論的に「納得」できて、さらに実際にも「良い音になる」aet独自の「小径中空円筒構造」を開発したのです。「小径中空円筒構造」と言っても、実際には「マカロニ」や「揖保の糸」のように、真ん中に「空間」がある訳ではありません。電気的に「中空」という意味です。
「整列巻き」というのは、当然「芯」があり、その芯にケーブルを隙間無く整列に巻き付けていく技術を言います。これまでは、この「芯」の部分に電気を通す素材が使われていました。
この「芯」の部分に「電気を通さない素材」を使う事で、電気的に「中空円筒構造」を実現しているのです。
◆ 「芯」の部分が一番大きな「壁」だった
実は、この「芯」を作るのに、大変苦労をしました。
オーディオケーブルは作成する段階で約400度の熱がかかります。この熱に耐え、柔らかな特質を持ち、かつ電気を通さない素材でないと採用できません。
いろんな繊維と組み合わせてみました。特注の技術と特別な素材を惜しみなく使ってテストを繰り返しました。
さらに、「芯」に使う素材にも、他の素材と同様に「高い精度」が求められます。精密な素材でないと、細いケーブルをきっちりと隙間無く巻くことは出 来ないからです。巻きが甘ければ、音はモアモアになってしまいます。それまでにも、熱に強い素材はあったのですが、精度が出せなくて困っていたのです。
数々の実験の結果、この頃開発された「石英の繊維を使った細いファイバー」が最高の精度を発揮する事が解ったのです。「耐熱」「しなやかさ」「精度」すべてにおいて、すばらしい素材でした。
この新しいグラスファイバーケーブルは、最高の「音」を出してくれました。この素材と出会わなければ「HHシリーズ3」は、実現出来なかったと言っても過言ではありません。
◆ 「アメージング」と絶賛されるケーブルが完成
「HHシリーズ3」では、さらに3層構造により「低音」「中音」「高音」の帯域別に、情報量がロスなく伝わるような工夫も施し、「パワーと繊細さの両立」を実現しました。
「HHシリーズ3」は、明らかにそれまでのケーブルと一線を画していました。反応はさらに良くなり、色彩感も出て、それでいてズドーンと出るパワーも強化されていました。
まさに小原が追い求めていたオーディオケーブルでした。
ここでも耳の肥えた方に聞いていただきました。
「こんなに良くなる訳はない。」とか「加工されたような音だ。」と言われた事もありますが、多くの方が「これまでと全く違う」「力強さと繊細さが共存している」「さらにすごくなった。」と評価していただけました。「リボン型のスピーカーを使った時のように、音が空間に広がっていく」と言われた事もありました。
これで「考えていたものは実現できた」と核心した小原は、「HHシリーズ3」の発売に踏み切ったのです。
この「HHシリーズ3」の発売は市場に強烈なインパクトを与えました。評価は、もちろん「HHシリーズ2」以上でした。雑誌や評論家は「アメージングだ」とか「本物よりもすばらしい」と書き立ててくれました。
しかし、そんな事よりも、いつものオーディオショップで会う顔なじみに「今度のケーブルはすごかったよ。」と言ってもらえた事が何よりもうれしかった。と小原は言います。
「HHシリーズ3」は発売の翌年に「HHシリーズ3.5」にバージョンアップされ、2年間で35万メートルを製造するという(たぶん日本では史上最高の)驚異的な実績をたたき出す事になるのです。(この35万メートルと言う数字は「電源ケーブル」だけの生産量です。)
次回「HHシリーズ3.5に秘められた新技術とは?」をお楽しみに